"十社十色"の憲法改正世論調査 全社の結果から最大公約数を読み解く①

ロシアのウクライナ侵攻や台湾有事の危機感から、憲法改正論議に変化は生じるのか。憲法記念日を前に各社が行った世論調査に全てチェックし、どこよりも詳しく分析する。
楊井人文 2023.05.07
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5月3日は憲法記念日でした。このタイミングにあわせて、メディア各社は世論調査に憲法改正に関する質問を設け、その結果を報道することが恒例行事のようになっています。

今年もいくつかのメディアが大きく報道しましたが、"十社十色"といっていいほど、かなりの違いが現れていました。

右から朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の朝刊(2023年5月3日)より一部抜粋

右から朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の朝刊(2023年5月3日)より一部抜粋

今年、いくつのメディアが世論調査を実施していたか調べてみました。直近の4月に憲法改正に関する質問を入れ、結果を報じていたメディアは8社ありました。

筆者作成

筆者作成

1社の結果だけをみるより、全社の結果を横断的に読むことで、より確実に、国民の憲法改正意識のありようがつかめるのではないか。そうすれば、今後の憲法改正論議の見通しもみえてくるのではないか。

そう考えて(ちょっと大変ですが)8社分の憲法に関する調査結果を横断的に分析し、最大公約数として確実に言えそうなことを探ってみました。

各社の世論調査報道の見出し

まずは、主要メディアがどのような見出しで世論調査の結果を報道したかをざっと見ておきたいと思います。

おそらくほとんどの人が、せいぜい1社か数社の結果しか目にしないでしょう。どの記事を目にするかで、異なる印象になることは避けられません。

読売や産経の記事をみた読者は改憲派が多数という印象をもつでしょうし、毎日や東京の記事だけをみると国民の大半は改憲を望んでいないと感じるのではないでしょうか。朝日の読者は改憲派が増加傾向にあるとの認識になりそうですし、NHKを見た人は9条改憲の賛否が拮抗しているとのイメージをもつことでしょう。

こうして6社分の見出しをながめるだけでも、1社の記事だけ見るより印象は変わると思いますが、もう少し細かく見ていきます。

設問次第でこれだけ変わる改憲賛否の結果

まず、改正対象の条文や内容を問わずに、「憲法改正」そのものの賛否を問う質問に対する回答結果を比較すると、以下のグラフのように大きな違いが出ました。

2023年5月3日までの各社報道をもとに、内容を特定しない形での改憲について質問していなかった日経・テレ東を除く7社の調査結果について、筆者が作成。

2023年5月3日までの各社報道をもとに、内容を特定しない形での改憲について質問していなかった日経・テレ東を除く7社の調査結果について、筆者が作成。

メディアによってこんなに違うのか、と驚かれるかもしれません。

調査対象は、いずれも全国の18歳以上の有権者を無作為(ランダム)に抽出して行われているので、読者層の違いが影響しているわけではないと考えられます。

実は、質問文や選択肢が大きな違いがあるのです。その違いをまとめたのが次の表です。

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『楊井人文のニュースの読み方』は、今話題の複雑な問題を「ファクト」に基づいて「法律」の観点を入れながら整理して「現段階で言えること」を、長年ファクトチェック活動の普及に取り組んできた弁護士の楊井がお届けしております。

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続きは、1721文字あります。
  • 設問の特徴を踏まえて分析 "強い改憲派"の割合は?

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