「ニュースウオッチ9」問題で揺れるNHK… あえて紹介したい良番組
先週、NHKの看板ニュース番組「ニュースウオッチ9」で、COVID-19ワクチンの接種後死亡した方の遺族を、あたかも感染死の遺族のように放送し、番組として謝罪する問題が起きました。
謝罪放送を受け、Yahoo!ニュース個人で経緯を記事化しましたが、その後も国会でのNHK答弁が問題視されるなど、波紋が続いています。
これは非常に深刻な問題なので改めてこのニュースレターで取り上げるつもりですが、今回はあえて、この件とは全く別の、最近強く印象に残ったNHKのある番組を紹介します。
それは、G7広島サミットの最中の5月20日に、教育テレビで放送されたETV特集『市民と核兵器〜ウクライナ危機の中の対話〜』です(25時午前0時再放送予定。NHKプラス配信は27日まで)。
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核兵器を放棄していなければ侵略されなかった?
よく知られているように、もともと旧ソ連下のウクライナには大量の核兵器がありました。独立後も世界第三位の核保有国でしたが、これを1990年代半ばに全て放棄しました。
この核兵器放棄と引き換えに、アメリカ、イギリス、ロシアといった核保有国がウクライナの安全保障を約束したのが「ブダベスト覚書」(1994年)。
ところが、クリミア併合(2014年)、ウクライナ東部の紛争、そして昨年の軍事侵攻で、ロシアに完全に反故にされてしまったわけです。

筆者作成
「ブダベスト覚書」当時のアメリカの大統領、ビル・クリントン氏は、最近、
ウクライナが核兵器を保有していたら、ロシアがウクライナに侵攻することはなかっただろう
昨年の侵攻以後、「もしあのとき放棄しなければ、ロシアに侵略されることはなかった」ということは定説のように言われ、今回紹介するETV特集でも市民の口から何度も出てきます。
たしかに、核保有国が他国から侵略を受けるようなことはめったに起きていない、というのが歴史的な事実です。第二次世界大戦後に、侵略を受けた国のほとんどは核を持たざる国でした。ただ、例外が全くないわけではありません。
核保有国なのに侵略を受けた事例として挙げられるのが、フォークランド紛争(1982年)です。核保有国であるイギリスが実効支配しているフォークランド諸島に、核兵器を持っていないアルゼンチン軍が侵攻し、軍事衝突が起きました。結果はイギリス軍がアルゼンチン軍を撃退しました。
ただ、フォークランド諸島はイギリス本土から遠く離れた島で、イギリスは核使用の威嚇もしていませんでした。あくまで「核保有で局地的・限定的な侵攻を抑止できなかった事例」ととらえた方がいいかもしれません。
核保有国が全面的な侵攻を受けた例はありません。全面的な侵攻による国家存亡の危機であれば核使用による報復の可能性が格段と高まり、それゆえ全面的な侵攻は抑止されると考えられるからです。「ウクライナが核を保持していれば、全面的な侵攻は避けられたのではないか」という考えが広まるのも、無理からぬことかもしれません。
やはり核は必要?侵略された当事者は何を語ったか
では、やはりウクライナが核兵器を放棄したことは間違いだったのか。今後は侵略を受けないようにするために、核兵器を再保有すべきなのか。
このETV特集では、日本で幼少期を過ごしたウクライナ人実業家、ボグダン・パルホメンコ氏が、母国の教師や戦場の兵士、市民らにこうした問いを投げかけつつ、自問自答する構成となっています。
番組では、核兵器の放棄は間違いだったという意見と、それでも正しかったという意見の双方が出てきます。どちらの意見であれ、戦争の渦中にある当事者の言葉は印象深いものでした。ここでは、その一部を紹介します。
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