子どものコロナワクチン リーフレットでは分からない重要な事実(下)
📚本日の論点
前回に続き、来月から始まる子どものワクチン接種について取り上げます。
厚生労働省が2月10日、保護者向けに作成したリーフレットには何が書かれ、何が書かれていないのか。
今回は「デメリット」(副反応)について検証したいと思います。
厚労省の情報提供は?
厚労省のリーフレットは、「安全性」に関して次のように説明しています。
痛みや発熱などの症状は、「ほとんどが軽度または中等度」で「現時点で得られている情報からは、安全性に重大な懸念はない」と説明されています。
心筋炎については「ごくまれですが、海外では子どもでも軽症の心筋炎を発症した例が報告されています」などと書かれいます。
慎重に読めば、「まれに重度」な副反応があり得ること、「心筋炎」もごくまれに起こり得ることが、否定されていないことがわかるでしょうか。
問題は、まれとはいえ、生じ得る重篤な副反応が具体的にどの程度の頻度なのか、という肝心な情報がほとんど提供されていない、ということです。
次に、肝心な情報を確認していきます。
デメリット情報その1:アメリカの副反応調査結果
子どもの接種はアメリカなどで先行しており、副反応の調査報告も出てきています。
Yahoo!のコロナワクチン特設サイトにわかりやすい表がありました。
痛みなど一見して軽度な症状の頻度が並んでいるようにみえますが、気になるのが「日常生活に支障」「登校できない」の割合です。5.1〜10.9%となっています。
アメリカのCDC(疾病対策予防センター)が発表したデータです。資料を確認しましたが、確かにそのように記載されていました。
子どもの接種後の健康に生じた影響として、「日常生活に支障」(Unable to perform normal )が5.1%〜7.4%、「登校できない」(Unable to attend school)が7.9〜10.9%。
発熱など「何らかの全身反応」(Any systemic reaction)は34.7%〜40.9%に生じたとのことです。
さらに「医療対応が必要」(Needed medical care)なレベルの健康被害は1.1〜1.2%、「入院」(Hospitalization)は0.02%とも記されています。
このような、症状がより重いケースの情報はYahoo!の表から割愛されていました。厚労省のリーフレットにも載っていません。
デメリット情報その2:心筋炎・心膜炎の報告頻度
小児向け(11歳以下)のワクチンはファイザー製(成人の3分の1の量)です。
リーフレットに書かれていたように、若年の男性に「心筋炎・心膜炎」の副反応リスクが相対的に高い、ということはご存知かもしれません。
一時、モデルナばかり取り上げられた時期もありましたが、これはファイザー・モデルナいずれにも当てはまる「重大な副反応」と位置付けられています。
リーフレットでは書かれていませんが、厚労省のQ&Aサイトをみると、心筋炎・心膜炎のそれぞれ「100万人接種あたりの報告頻度」を確認することができます。
厚生労働省Q&Aサイトより(12月24日報告分まで)
厚生労働省Q&Aサイトより(12月24日報告分まで)
男性の高齢者と若年者を比較すれば、歴然とした違いがありますね。
子どもへの接種について見てみると、次のような情報が読み取れるのではないでしょうか。
▼12〜14歳男児の「心筋炎」「心膜炎」の発生頻度を合計すると、ファイザーで100万人あたり31.7人、モデルナで100万人あたり112人の頻度で発生
▼12〜14歳男児のファイザーの「心筋炎」の発生頻度は、全年齢で最も高く、高齢者の約20倍
▼一方、12〜14歳女児の「心筋炎」「心膜炎」の発生頻度を合計すると、ファイザーで100万人あたり4.0人。同年代の男児の約8分の1
「治験」で明らかにされず、大規模接種後に判明
ここで、「心筋炎」等の副反応リスクがどのように確認、周知されるに至ったかを、少し振り返っておきたいと思います。
ワクチンを含む医薬品は、臨床試験や「治験」を通じて有効性・安全性が確認された後、厳しい審査を経て承認されることになっていることは、皆さんもご存知かと思います。
皆さんもご記憶にあるかと思いますが、ワクチン接種前に言われていた副反応リスクはもっぱら「アナフィラキシー」でした。「心筋炎・心膜炎」なる副反応が生じ得ることはまったく知らされていませんでした(ワクチンの審査報告書に「心筋炎・心膜炎」への言及なし)。
若年男性の心筋炎リスクが「予想外に多発」しているとの情報がもたらされたのは、昨年6月ごろのことでした(ロイター通信)。
厚労省が、若年男性に注意喚起を行ったのは、昨年10月15日のことです(毎日新聞)。
そして、「心筋炎・心膜炎」がファイザー・モデルナに共通する「重大な副反応」として公式に認められたのは昨年12月3日でした(共同通信)。
あまり知られていないことですが、昨年12月、ワクチンの説明書に「重大な副反応」としてアナフィラキシーに加え「心筋炎・心膜炎」も追記されました(小児用の説明書も参照)。
既に10代・20代とも接種率が70%を超え、ほぼ終了していたころになります。
昨年12月13日公表時点の年代別接種者・接種率(国立感染症研究所より)
接種が始まる前、ファイザー・モデルナのワクチンは短期間で開発されたものの「大規模な治験が慎重に行われ、安全性は十分に確認された」という説明を繰り返し聞かされてきたかと思います。
にもかかわらず、承認審査では明らかになっていなかった、アナフィラキシー以外の重大な副反応が、大規模な接種が始まってからしばらくして判明し、公式に副反応と認められたのは接種がほぼ終わった後だったということは、否定しようのない事実です。
厚労省の「情報操作」と疑われても仕方のない説明
こうして、「心筋炎・心膜炎」について注意喚起を呼びかけるリーフレットが、急きょ作られました。昨年10月15日のことです。
この頃すでに10代・20代の接種率(1回以上)は50%を超えていました(国立感染研究所のレポート)。
このリーフレットは今も、保護者向けの情報提供に使われているものですが、「情報操作」が疑われても仕方のない、重大な問題が見つかりました。
こちらの表をご覧になって気づいたことはありますでしょうか。