COVID-19ワクチン死亡被害救済申請は684人 4月時点、審査終了は1割程度
新型コロナ(COVID-19)ワクチンの健康被害救済申請が増加し、多くの審査が滞留している問題で、接種後死亡した人の遺族による被害の申請が684件に上っていたことがわかりました。政府が4月中旬、国会答弁で明らかにしていましたが、報道はされていませんでした。
厚生労働省は、健康被害申請の全体の受理件数は公表しているものの、死亡一時金の請求件数などの詳細は一切明らかにしていません。
厚労省の統計では、1977年以後の44年間で、健康被害救済制度に基づいて死亡被害が認定された件数は、全種類のワクチンで計151件でした。ところが、COVID-19ワクチンだけで既に67件が認定され、さらに600件を超える死亡事案が審査中となっていることになります。
今回の新事実を含め、現在の審査状況について整理してお伝えします。
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最新の審査状況
厚労省の審査会は現在、毎月3回のペースで開かれ、月数百件の審査結果を公表しています。
5月31日現在、公表されている最新の審査状況は次のようになっています。
しかし、この公開資料には、全体の件数について次のような情報しか記載しておらず、その内訳は開示していません。
上記資料より
「進達受理件数」とは、被害救済の申請を受け付けている全国自治体から厚労省に送付され、受理された件数を意味します。
進達受理件数の総数が「7747件」と書かれているだけで、そのうち死亡や後遺障害の救済申請件数、年代や性別といった情報は一切開示されていません。
審査結果の認定件数も「2639件」と書かれているだけで、内訳は記載されていません。
ただ、毎回の審査結果の資料に「死亡一時金」「医療費・医療手当」という請求内容が記されているため、これまで公開された情報を集計すると、死亡で認定されたのは67件、否認されたのは3件と分かります。
ワクチンの健康被害救済制度では、接種による死亡が認定された場合は「死亡一時金」(4530万円)、「葬祭金」(21万2000円)の支給対象となります。別表で定める後遺障害が認定された場合は「障害年金」、接種による健康被害の治療を受けた場合は「医療費」「医療手当」が支給対象になります。
受理件数内訳は非公開 国会答弁で明るみに
受理件数のうち何件が死亡や後遺障害に関する被害の申請なのかは、国民の関心事にかかわる重要な情報だと思われます。
そこで、厚労省の健康被害救済制度の担当部署に取材を試みましたが、どうしても回答してもらえませんでした(今後、情報開示請求を行う予定です)。
ただ、国会議事録を調べてみると、4月18日に参議院の委員会で、死亡被害の救済申請が何件あるか、答えていたことがわかりました。
参議院内閣委員会(2023年4月18日)で答弁する大坪寛子・厚労省大臣官房審議官(参議院インターネットテレビより)
(この後の内容)
▼健康被害救済制度に基づく受理件数についての政府答弁の内容
▼受理件数の内訳(図)
▼死亡事案の審査件数の推移
▼死亡被害認定者の年代別内訳(図)
▼過去の全ワクチンの被害認定件数との比較