「全国の重症者数4カ月ぶり700人超 今年に入り13倍増」のニュースの読み方
これを見て不安を感じられた方も多いのではないでしょうか。「やはりオミクロン株でも重症者がこれだけたくさん出てしまうのか」と。正直いうと、小心者の私も不安になりました(笑)。
しかし、私の場合、こうした人を不安にさせたり怒りを覚えさせたりする情報に接した時「本当なのか?」と調べる癖がついています。この場合も即座に、このニュースとあわせて押さえておくべきデータを調べ、400字という字数制限ピッタリにしてYahoo!ニュースのコメント欄に投稿しました。そこでは十分に伝えきれなかったことを、このニュースレターの読者の皆様に、できるだけわかりやすくお伝えしたいと思います。
新規陽性者数の波、デルタ株の3倍超
まず確認しておくべきは、オミクロン株の第6波は、過去最大となったデルタ株の第5波をはるかに上回る陽性者数を出していることです。
以下のグラフがコロナ禍が始まって以来の「新規陽性者数」の推移。
厚生労働省(1月28日更新、以下同)より
あの街頭から人影がなくなった緊急事態宣言のときの第1波だけでなく、2回目の緊急事態宣言が出た第3波もペチャンコになるほど、第6波はケタ違いの数です。第5波(デルタ株)とも比べても、当時のピークの約3倍だとわかります。
これだけみると、人によっては恐ろしく感じるかもしれません。逆に、人によっては、第1波のときにあれだけ大勢の人が恐れてしまったことが不思議に感じるかもしれません。
「現在重症者数」の波
次に、報道された「重症者数」の推移(現在厚労省が出しているのは、第1波の途中(2020年5月9日)からのデータしかないため、先ほどのグラフと少し期間が異なりますが、第2波以降は入っています)。
厚生労働省より
第3波〜第5波いずれよりも下回っていることがわかります。現時点では第5波のピークの約3分の1です。もちろん、これはあくまで現時点です。第6波はまだ増加傾向が止まっていませんので、今後も重症者数は増えるでしょう。そうだとしても、「新規陽性者数」のグラフと比較してわかるのは「波」が過去とはかなり異なることです。
ふりかえると、昨冬から年初にかけては重症者数が最も少ない時期でした。FNNニュースの「今年に入り13倍」というのは事実ですが、最も人を驚かせられる数字を見出しにとったということでしょう。この記事を出した「FNNプライムオンライン」(フジテレビ系)というニュースサイトは、PV狙いと思われる見出しが多いため、要注意です。
ただ、ここでひとつ確認していただきたいのが、日々発表・報道されている「重症者数」は新規重症者数ではないということ。この2年間、「今日は感染者数▲人、重症者数▲人」というニュースを何度も目にしてきたことかと思います。前者はその日に新たに届出・確認された「新規」陽性者数、後者はその日時点で入院中と確認された、いわば「現在重症者数」。「今日の入院者数▲人」という報道も同じく「現在入院者数」です。
「今日は感染者数1000人、重症者数100人」というニュースを目にしたら、間違っても「今日は新たに1000人の感染者が出て、新たに100人の重症者が出た」と解釈しないようにしてください。これは「今日時点で過去の重症者も合わせて計100人の重症者が入院中」という意味ですから。
では「今日の新規重症者数は何人なの?」と思う人が当然いると思いますが、実は、1日あたりの新規入院者数・新規重症者数は集計・公表されていませんので、分かりません。はっきりしていることは、実際の新規重症者数は「今日の重症者数▲人」という報道発表よりもかなり少ないということです。
少し脱線してしまいましたが、死者数の推移もみておきます。こちらは「新規死者数」です。増えていることは確かですが、「現在重症者数」のグラフと同様の傾向だとわかります。
厚生労働省より
さて、報道発表されている「現在重症者数」の話に戻りますが、これは実は、都道府県ごとに異なる基準で集計したものです(厚労省サイトの注釈コメント6参照)。日々の「増減の傾向」をみるにはいいのですが、「実数値」としては厳密ではありません。
統一的な国基準で集計した「現在重症者数」は週1回公表されており、最新は1126人(1月25日時点)。第5波のピークは3030人、第4波のピークは1843人でした(厚労省サイト「入院者数/重症者数」参照)。これでみても、現時点では第5波のピークの約3分の1とわかります。
日々報道発表されている「現在重症者数」(734人、1月29日)より多いことがわかります。これは、「重症度に関係なくICU・HCUで管理された患者をカウントする」(人工呼吸器・ECMO装着を含む)という基準で集計されたものだからです。病床に余裕があるときは、重症化リスクのある患者は重症化する前であっても念のためにICU等に管理していると言われています。
正真正銘の「重篤患者」はどれだけ増えているのか
では「本当に重症化している患者」はどれだけ増えているのか。
東京都の「現在重篤患者」数の推移が以下のグラフです。