子どものコロナワクチン リーフレットでは分からない重要な事実(上)
📚本日のニュースと論点
5〜11歳を対象とする新型コロナワクチンが来月から始まることになり、それに関連するニュースを目にする機会も増えてきました。
子どものワクチン接種に関して様々な議論があるところですが、厚生労働省が2月10日、保護者向けのリーフレットを作成し、公表しました。
その内容を調べてみると、メリット(効果)・デメリット(副反応)に関して、いくつか重要な事実が抜け落ちていることがわかりました。
リーフレットには何が書かれ、何が書かれていないのか。「メリット」「デメリット」の順に、公的機関が出している公開情報をひもといて、お伝えしたいと思います。
💡なぜ検証する必要があるのか?
本論に入る前に、なぜ、厚労省のリーフレットについて検証しようとするのか、趣旨を説明しておきたいと思います。
私は、子どもに対する新型コロナワクチン接種に反対とか、何か特定の立場にたっているわけではありません。個人的には、判断に必要な情報が十分に提供されていることを前提に、打つ/打たないの選択肢は保障されるべきとの考えを(現時点では)持っています。
ただ、これまでのコロナワクチンに関して、十分に情報提供されてきたのかどうか、疑問に感じてきました。
政府・自治体は「国策」として接種を推進する立場ですので、国民が「接種しよう」という気持ちになるように情報提供を行う、逆にいえば「接種したくない」という気持ちにならないように情報提供を行うのが、「政策実現」の観点からは合理的であり、ある意味当然のこととも言えるかもしれません。
わかりやすくいえば、「接種したくない」という気持ちになるような情報があってもその積極的な提供は控える、ということが容易に想定されるわけです。
ですから、政府・自治体とは立場の異なる民間の専門家、あるいはメディア・ジャーナリストが、いったん「国策」から距離をおいて、公的な言説に対して問題がないかどうか、冷静に「吟味する」(=念入りに調べる)視点をもって情報提供することが大事だと思うのです。問題は、それがきちんとなされてきたどうか。
では、少し長くなりますが、念入りに調べてみましょう。
メリットその1:発症予防効果について
さて、厚労省が作成したリーフレットは、保護者向けが2ページ、子ども向けが1ページのみです。わかりやすくまとめられていますが、情報量は限られています。
まず、メリット(効果)に関しては、以下の記述が全てです。
新型コロナに感染しても、接種しないより接種した方が「症状が出にくくなる効果」(発症予防効果)があるという説明です。
根拠となるデータは、小さい字で「オミクロン株が出現する前のデータ」と注記されています。裏返せば、少なくとも現時点では「オミクロン株が出現した後のデータは存在しない」ということを意味しています。
ただ、そのことは「オミクロン株に対して発症予防効果がない」ことを意味するわけではありません。
以下は、接種開始が比較的遅かった20代(現在の接種率は80%弱)の接種歴別にみた陽性者数のデータです。
厚生労働省アドバイザリーボード(2月16日)の資料より筆者作成
10万人あたり新規陽性者数でみると、未接種者と2回接種者でかなり開きがあることがわかります。「接種歴不明」の陽性者をすべて「2回接種済」に合算したとしても「491.5人/10万人」となりますので、2倍以上の開きがあります。これを見る限り、昨年の接種で「感染しにくい」効果が現れた可能性を示しているように思われます。
とはいえ、2回接種者の母数が大きいので「絶対数」でみれば、2回接種済みの陽性者(いわゆるブレークスルー感染者)が未接種の陽性者を上回っています。
これだけたくさんのブレークスルー感染者が発生している事実をみれば、「接種すれば比較的かかりにくくなる」とはいえ「ほぼ確実に予防できる」とはいえず、「接種しても感染するリスクは十分にある」と言えるのではないでしょうか。
メリットその2:重症化リスクと重症化予防効果について
コロナワクチンには「発症予防効果」と「重症化予防効果」があると言われていることは、ご存知かと思います。
おそらく「重症化予防効果」(感染は防げなくても、重症化は防げる効果)を重視する方が多いのではないでしょうか。
ところが、小児接種用リーフレットには、この「重症化予防効果」に関する説明がありません。次のような記述はあります。
特に、慢性呼吸器疾患、先天性心疾患など、重症化リスクの高い基礎疾患を有するお子様は接種をおすすめしています。
ですが、「重症化リスクの高い基礎疾患のある子どもが接種すれば、重症化予防効果がある」のかどうかは、はっきり書かれていないのです。一般向けQ&Aサイト、別の説明書も確認しましたが、やはりそのような説明は見つかりませんでした。
ところが、リーフレットを最終決定した2月10日、厚労省のワクチンに関する分科会で公表された資料の中に、リーフレットには書かれていない、ある重要な記述がありました。