「オミクロン株でも人工呼吸器の頻度はインフルより高い」は本当か
前回「全国の重症者数4カ月ぶり700人超」というニュースの読み方についてお話しました。そこで積み残しになっていた「人工呼吸器が装着される頻度が新型コロナの方が季節性インフルエンザより高い」のかどうかという論点について取り上げたいと思います。
改めて、重症者急増を報じたYahoo!ニュースの記事に投稿された呼吸器内科医の方のコメントを確認しておきましょう。
オミクロン株は季節性インフルエンザとよく比較されますが、人工呼吸器が装着される頻度は新型コロナのほうがまだ高い状況です。季節性インフルエンザの流行期でも人工呼吸器が各地で多数装着されるという事態には陥りません。重症化率は確かに低いのですが、オミクロン株がまだ風邪と言うには早い、中途半端でやっかいな状態と考えています。
この「人工呼吸器が装着される頻度は新型コロナのほうがまだ高い状況」という指摘は、文脈上「オミクロン株」と比較していると思いますので、それを前提に見ていきます。
厚労省が発表している「重症者数」は「人工呼吸器装着数」と同じではないことは、前回解説しました。「重症者数」には、重症度にかかわらず、ICU/HCUで管理されている患者数もカウントされています。
第6波の人工呼吸器の患者数は
では、第6波において人工呼吸器が装着される頻度をみてみましょう。これは前回紹介したECMOnetで確認できます。
1週間あたりの新規人工呼吸器・ECMO装着件数(全国)を表したグラフがこちらです。
ECMOnetより
第1波〜第5波と比べて、第6波はまだ「波」といえる「波」が現れていないことがわかりますね。
第5波のピーク時は、人工呼吸器またはECMO管理の重篤患者数が3週続けて300人以上という状況もありました。
一方、第6波は1日あたり新規陽性者数が3倍になっているのに、人工呼吸器を装着する患者があまり増えていないのです。
オミクロン株が流行し始めた昨年11月以降のグラフをみてみます。
ECMOnetより
11月以降、1週間あたり新規の人工呼吸器装着数は数人レベルでしたが、直近の1月16日の週は新たに22人(すべて人工呼吸器)。ECMOを装着する患者は12月以降、計3人です。
現在増加傾向にあることは確かで、1月23日の週はもっと増えると思われます(1月29日時点で、人工呼吸器・ECMO装着の患者数は121人で、稼働率は約6%)。
ただ、現時点では、以前の流行期のように、毎週数百人が新たに人工呼吸器をつけるという事態は起きていないことは確認できるかと思います。
次に、季節性インフルエンザとの比較をみてみましょう。