心筋炎の発症、若年男性に集中 ワクチン接種健康被害の審査結果を分析

若年者のワクチン接種の健康被害が増え続けている。若年者にとって「接種した場合のメリットが、しない場合を大きく上回る」ことが、疑いの余地がないほど明白といえるのか。
楊井人文 2023.01.31
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厚労省が新型コロナワクチンを接種後の健康被害について審査を行っている中、若年男性の急性心筋炎・心膜炎の認定事例が増えていることがわかりました。

厚労省の審査会は1月23日までに約6千件の申請を受理し、1625件の審査を終え、1459件の健康被害を認定しています(うち死亡認定は20件)。このうち、急性心筋炎・心膜炎による健康被害が、少なくとも37件含まれていることがわかりました。

審査未了案件は4300件を超え、増加の一途をたどっています。この制度に基づく審査状況については、死亡事案の認定が発表された場合を除き、大手メディアはほとんど報道しません。今回は、急性心筋炎等による健康被害の内訳などを中心に最新情報をお伝えします。

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『楊井人文のニュースの読み方』は、今話題の複雑な問題を「ファクト」に基づいて「法律」の観点を入れながら整理して「現段階で言えること」を、長年ファクトチェック活動の普及に取り組んできた弁護士の楊井がお届けしております。

大手メディアが報じる内容やインフルエンサーの発言をうのみにせず、事実や法律に基づいた重要な論点を知っておきたい方に向けて、だいたい週1本以上のペースで執筆することを目指します。

【追記】こちらは無料の記事になります。2023年5月から最新の情報を新たなニュースレター「COVID-19ワクチン メディアが報じないファクト」で配信を始めましたので、ご関心のある方はそちらもご覧ください。

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大前提として、今回ここでお伝えするのは「健康被害救済制度」に基づく審査結果であり、「副反応疑い報告制度」の報告件数とは異なることを確認しておきたいと思います。

副反応疑い報告制度は、接種後副反応が疑われる事例について医療機関に報告を求めるもので、個別事例の因果関係を審査するのは死亡例に限られ、ほとんどが「情報不足等によりワクチンと死亡との因果関係が評価できない」で片付けられています。他方、健康被害救済制度は、接種後の被害者本人または遺族が国に医療費や死亡一時金などの補償を求めるもので、因果関係を証明できる資料をそろえて申請を行い、個別事例の因果関係が審査される制度です。自ら申請手続きを行う必要があるため、副反応疑いと報告されたすべてのケースが審査対象になっているわけでは、もちろんありません。

この健康被害救済制度に基づき、コロナワクチン接種後の健康被害として認定されたケースで最も多い症例はアナフィラキシー・急性アレルギー反応で、半分以上を占めています。

急性心筋炎・心膜炎が認定されたのは、認定事例全体の1割に満たず37件ですが(最年少が14歳、最高齢が71歳)、内訳を分析すると、圧倒的に男性が多く、かつ、20代以下の若年者に集中していることが浮き彫りとなりました。

【性別】男性35人、女性2人
【年代別】10代13人、20代13人、30代2人、40代4人、50代3人、60代1人、70代1人

まだ4000件超の審査未了案件があることから、今後、認定事例は更に増えるとみられます。

***この後の主な内容***
・急性心筋心膜炎に認定された37事例の一覧表
・若年者の感染後重症化率と健康被害認定割合の比較
・インフルエンザワクチン健康被害との比較
・審査体制強化後の審査状況

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続きは、3122文字あります。
  • 急性心筋心膜炎に認定された37事例の一覧表
  • 若年者の感染後重症化率と健康被害認定割合の比較
  • インフルエンザワクチンとの比較
  • 審査体制強化するも追いつかず

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