訂正します コロナ「2類相当」変更は法改正せず厚労相の判断で可能
昨日のニュースレターで、新型コロナウイルス感染症は、感染症法で「指定感染症」でも「2類」でもない「新型インフルエンザ等感染症」というグループに分類されていて、この現状は国会で「法律」を改正しなければ変えることができなくなっている、と申し上げました。
その後、読者の方から情報提供をいただき、厚生労働大臣が決定すれば「5類」に変更できる法律のしくみになっていることがわかりました。ですので、私の説明を訂正しなければなりません。
昨年2月の法改正で、新型コロナは「新型インフルエンザ等感染症」の一つとして位置付けられたのですが、その際に厚労省が出したQ&Aの文書にこう明記されていたのです。
「厚生労働大臣が新型インフルエンザ等感染症と認められなくなった旨を公表すれば、法の適用対象でなくなります。」
ここには法的根拠が示されていないので、調べてみると、感染症法に規定がありました。
感染症法の44条の2第3項という条文です。
(新型インフルエンザ等感染症の発生及び実施する措置等に関する情報の公表)
第四十四条の二 厚生労働大臣は、新型インフルエンザ等感染症が発生したと認めたときは、速やかに、その旨及び発生した地域を公表するとともに、当該感染症について、第十六条の規定による情報の公表を行うほか、病原体の検査方法、症状、診断及び治療並びに感染の防止の方法、この法律の規定により実施する措置その他の当該感染症の発生の予防又はそのまん延の防止に必要な情報を新聞、放送、インターネットその他適切な方法により逐次公表しなければならない。
2 前項の情報を公表するに当たっては、個人情報の保護に留意しなければならない
3 厚生労働大臣は、第一項の規定により情報を公表した感染症について、国民の大部分が当該感染症に対する免疫を獲得したこと等により新型インフルエンザ等感染症と認められなくなったときは、速やかに、その旨を公表しなければならない。
つまり、厚生労働大臣が、もはや「新型インフルエンザ等感染症」に該当しないと判断して公表しさえすれば、「入院勧告」「無症状者への適用」その他さまざまな法的な縛りが解けるのです。
新型インフルも「大臣の公表」で5類に変更
実際に、2009年の新型インフルエンザは、2011年に当時の厚労相がこの規定に基づき、もはや「新型インフルエンザ等感染症」と認められなくなったとして、「季節性インフルエンザ」へ移行する旨を公表していました。名称も「新型インフルエンザ(A/H1N1)」から「インフルエンザ2009」に変更されていたのです。
ただ、この厚労相の「公表」だけで法律の適用対象でなくなる、という仕組みは、法律家としては違和感がありました。条文にも「公表」の結果どうなるかは明記していないのです。
そこで念のため、改正当時の資料も探してみると、ありました。2008年改正当時の説明資料です。
感染症法改正について(厚生労働省、2008年)より一部抜粋
厚労大臣の決断次第
現在の感染症法には「5類」にインフルエンザなど8つの感染症が分類されているのですが、「コロナウイルス」は入っていません。ただ、「厚生労働省令」でインフルエンザと同レベルの感染症を5類に分類できるようになっています。
厚生労働省令とは、閣議決定も経ずに、厚生労働大臣の一存で定められるものです。
(定義等)
第六条 この法律において「感染症」とは、一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、五類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症をいう。・・・(略)・・・
6 この法律において「五類感染症」とは、次に掲げる感染性の疾病をいう。
一 インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)
二 ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く。)
・・・(略)・・・
九 前各号に掲げるもののほか、既に知られている感染性の疾病(四類感染症を除く。)であって、前各号に掲げるものと同程度に国民の健康に影響を与えるおそれがあるものとして厚生労働省令で定めるもの
ですので、新型コロナの場合、「新型インフルエンザ等感染症」の扱いから外す旨の「公表」をした後、「省令」を出せば、5類に移行できることになります。法律改正も閣議決定も必要ありません。(ちなみに、「3類」は省令で追加できないので、法律改正なくして3類への変更は不可)
法律上の仕組みとしては、厚生労働大臣の決断次第、ということになります。
後藤茂之厚生労働大臣(厚生労働省ホームページより)
以上、訂正いたしました(朝野和典氏インタビュー記事も訂正、加筆しました)。情報提供ありがとうございました。
「もっと病原性の強い変異株が出たら…」
5類への移行に反対する口実として「将来もっと病原性(毒性)の強い変異株が出現するかもしれない」ということを言っていた政治家もいます。「武器」を手放したくない、というロジックですね。
ですが、法律を改正しない限り、「新型コロナウイルス感染症」が「新型インフルエンザ等感染症」に分類されている規定自体は残っていますし、5類に移行するのも「省令」でできるのですから、元に戻すことも「省令」でできてしまうわけです。
「将来〜かもしれない」というロジックは、今回のコロナ禍で「人流が戻ればリバウンド(再流行)するかもしれない」などとさんざん繰り返されました。
備えは必要ですが、いつまでも恐れていたら、コロナ禍による様々に制限された状況を永久に終わらせることはできません。
2009年の新型インフルエンザが「季節性インフルエンザ」に扱いが変わった時の、地味な新聞記事を紹介して今回は終わります。一日も早く、こんなベタ記事が載る日を願って・・・
東京新聞2011年4月1日付け夕刊
(追伸)「コロナ禍検証プロジェクト」で、大阪府の重症化率・致死率に関する最新データを紹介しました。よろしければ、ご参考にしてください。
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