オミクロン株「5類変更」是か非か 各政党のスタンスは…「日曜討論」を読む

タブー視されてきた論点だが、現場の過重負担を生み、社会不安を募らせる元凶になってきた「隔離」優先の政策を転換するのかが問われている。
楊井人文 2022.02.05
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皆さんはNHK「日曜討論」をご覧になったことはあるでしょうか。毎週日曜午前9時から1時間、生放送で政党の幹部などが議論しています。これ、実は大変貴重な番組です。政党どうしが公開の場で政策の議論をする、数少ない機会だからです。

よくニュースで「国会審議」の一場面を目にしますね。あれは、基本的に政府 vs 議員(政党)という構図です。国会議員が政府・行政に質問して、担当大臣や官僚に説明(=答弁)を求める場所であって、政党間、国会議員どうしで議論する場面はほとんどありません(政党間の話し合いの場はほぼ非公開)。

ですので、「日曜討論」のような討論番組では、各政党の考え方、政策の違いが浮き彫りになりやすいのですが、なかなかニュースとなりにくい。報じられたとしても、ほんのわずかの発言内容しか取り上げられません。

その例が、先週末のこちらのニュースです。

前回は「本当に抑えるなら人流抑制以外方法はない」という発言を検証しましたが、今回は、どのメディアも報道しなかった「5類変更」をめぐる発言を取り上げます。

新型コロナの感染症法上の分類がなぜ問題になるのか

「2類」とか「5類」とか、どこかで聞いたことのある方はいると思いますが、この問題のポイントを簡単に解説しておきましょう。

わかりやすく言えば、日本の法律は、様々な種類の感染症を危険度に応じてグループ分けして、危険度が高いグループほど、感染症と闘うための強力な「武器」の使用を行政・自治体に認める仕組みになっています。こうして与えられる「武器」は、感染症対策とはいえ、私たちの社会生活、経済活動の「制限」を伴う諸刃の剣でもあります。

それぞれのグループごとに、どのような「武器」の使用が認められているかを整理した表がこちらです。

感染症法では「指定感染症」「新感染症」も含めて計8種類のグループがありますが、現在指定されている感染症は、上記6種類のいずれかに分類されています。

エボラ出血熱やペストは危険度が最も高い「1類」、結核やSARS、鳥インフルエンザは「2類」・・・といったように分類され、季節性インフルエンザは「5類」。

新型コロナは、「1類」〜「5類」のいずれでもない特別なグループ、当初は「指定感染症」でしたが、昨年2月の法改正以降は「新型インフルエンザ等感染症」に分類されています。

「新型コロナは2類相当」は本当か?

一部で「2類相当」の扱いは、政府の決断があれば「政令」改正で「5類」にできる、という主張を聞きますが、基本的に間違いです。

国会で「法律」を改正しなければ「新型インフルエンザ等感染症」というグループに新型コロナが分類されている現状を変えることはできなくなっているのです(昨年の緊急事態宣言のドタバタの最中に改正されてしまいました)。

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【訂正】感染症法44条の2第3項で、厚生労働大臣がもはや「新型インフルエンザ等感染症」と認められないと公表すれば、現在の分類を事実上変更できるようになっていました。詳細はこちらで説明しました

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新型コロナは、この危険度に応じた分類に当てはめれば「2類相当」だと言われてきました。私はこの「新型コロナは2類相当」という言説は一種の都市伝説なのではないかと思っています。

上の表をもう一度よくみてください。

新型コロナでは、「1類」でも適用されない「外出自粛」、「2類」でも適用されない「無症状者への適用」という「武器」の使用が認められているのです。

現行法の位置付けはエボラ出血熱やペストより危険度の高い扱い、いわば「0類相当」と言ってもいいかもしれません。

「隔離」優先政策でよいのか?

それはともかく、より本質的な違いに着目したいと思います。

上の表をみて気づかれましたか?「2類以上」と「3類以下」が、「入院勧告」があるかないか、「入院場所」が指定医療機関か一般医療機関かの分かれ目、になっていますね。

「2類以上」は、感染者は特別な病院への入院対象となり、普通の病院では診療しない、その代わり公費で負担する、という「隔離」中心の対策となります。感染者を全て把握して隔離しなければなりませんから保健所の役割が非常に大きく、負担も大きくなります。

一方、「3類以下」は、普通の病院で診療を受けられ、費用は保険適用の自己負担、という「医療」中心の対策となります。

私は新型コロナを「5類」にすべきかどうかではなく、「2類以上」の扱いを「3類以下」に変更するべきか否かが、この問題の本質ではないかと考えています。

というのも、コロナ禍始まって以来の「隔離」優先の対策が、この感染症の危険度と釣り合わず、現場の過重負担を生み、それが報道で増幅されて社会不安を募らせる元凶になってきたので、まず「隔離」優先の政策を転換する必要がある、と考えているからです。

世論調査に現れた理解不足

ただ、「新型コロナは危険」一辺倒の中でタブー視、軽視されてきた論点なので、あまり議論が整理されてきませんでした。

先日、日経新聞の世論調査で、新型コロナを「季節性インフルエンザと同じ扱いにすべき」が60%という結果が報じられました。

同時に、「まん延防止等重点措置」について「妥当」「もっと厳しい措置をとるべき」があわせて74%、「もっと緩い措置で十分」はわずか18%という結果も出ていました。

「季節性インフルエンザと同じ扱い」にすれば、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置といった特措法上の「武器」は使えなくなる、ということを理解していない人が、いかに多いかを示しています。

きちんと議論をしなければ問題の理解も進まない、ということでもあります。

長くなりましたが、では「日曜討論」で各党の責任者はこの論点に対して、どう向き合い、議論したのかを見ていきましょう。

NHK日曜討論(1月30日放送)より

NHK日曜討論(1月30日放送)より

維新の問題提起に、各党はどう答えたか

口火を切ったのは、日本維新の会・音喜多駿政調会長です。

「新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを5類、あるいは5類相当に見直していくべきと考えています。コロナを決して軽視しているとか、これでたちまち解決するというわけではありませんが、公衆衛生、保健所中心の考え方から医療現場中心の考え方へと切り替えていく必要があります」

まさに先ほど指摘した「2類以上」「3類以下」の本質的違いを踏まえた「政策転換」を求めていることがわかります。

これに対して、各党の反応をどうだったのでしょうか。

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